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町田・相模原の会社売却で知的財産はどう引き継ぐ?商標・著作権・職務発明・営業秘密を企業価値につなげるM&A実務

2026 8/10
コラム
2026年8月9日2026年8月10日
町田・相模原の製造会社で知的財産と設計資料の承継を相談する経営者とM&Aアドバイザー
目次

導入|会社の強みが『会社のもの』とは限らない

東京都町田市、相模原市、多摩南部の中小企業が会社売却や事業承継を検討するとき、決算書に載りにくい強みとして知的財産があります。長年使ってきた屋号、商品名、ロゴ、独自の図面、施工要領、顧客向け資料、写真、動画、ウェブサイト、ソフトウェア、製造条件、レシピ、見積りの仕組み、顧客対応のノウハウなどです。これらは買い手候補にとって、売上を維持し、承継後の成長を実現するための重要な資産です。一方で、実際の権利者が会社ではなく、創業者個人、従業員、退職者、外注先、制作会社になっているケースは珍しくありません。

知的財産の問題は、登録証を集めれば終わりではありません。商標権や特許権のような登録された権利に加え、著作権、営業秘密、職務発明、ドメイン名、SNSアカウント、外注成果物、ライセンス契約まで、事業の継続に必要な権利と情報を一つの流れとして確認する必要があります。権利帰属が曖昧なまま買い手候補へ説明すると、企業価値評価の減額、表明保証の強化、クロージング条件の追加、取引延期につながりかねません。

本稿では、町田・相模原・多摩南部の中小企業オーナーが、知的財産を企業価値につなげながら秘密保持を守り、買い手候補探索からデューデリジェンス、最終契約、承継後の運用まで進める方法を解説します。法律上の結論は契約や制作経緯ごとに異なるため、個別案件では弁護士、弁理士、税理士等への確認が必要です。しかし、経営者が先に事実関係を整理しておけば、専門家への相談もM&A支援機関との連携も格段に進めやすくなります。

なぜ知的財産の整理が企業価値評価を左右するのか

買い手が購入したいのは、過去の利益だけではなく、将来も利益を生み出せる仕組みです。地域で知られた店名、指名検索されるブランド、再現性のある設計図、受注率を高める提案書、短納期を支える工程条件、継続課金を生むソフトウェアなどは、その仕組みの一部です。これらを会社が安定して使用でき、第三者の権利を侵害せず、承継後も利用を続けられることが確認できれば、正常収益力の持続性を説明しやすくなります。

反対に、主力商品の名称が登録商標に抵触するおそれがある、ウェブサイトの著作権が制作会社に残っている、重要な図面を退職者の個人端末だけで管理している、基幹ソフトの契約が社長個人名義で譲渡禁止になっている、といった事情が判明すると、買い手は追加費用と事業停止リスクを見積もります。単純な権利価値だけでなく、名称変更、再制作、システム移行、紛争対応、顧客離れまで想定するため、価格条件に影響します。

大切なのは、知的財産の価値を過大に主張することではありません。どの知的財産が、どの売上、粗利、顧客維持、コスト削減、参入障壁に結びついているかを具体的に示すことです。ブランド名なら指名検索やリピート率、図面なら再製作時間の短縮、ノウハウなら不良率や教育期間、ソフトウェアなら継続契約数と解約率など、事業指標とのつながりを説明すると、買い手候補は将来キャッシュフローへ反映しやすくなります。

最初に作る『知的財産・デジタル資産台帳』

整理の出発点は、知的財産・デジタル資産台帳です。項目は、名称、種類、内容、利用部門、関連商品・サービス、権利者、登録番号、出願日・更新期限、作成者、作成日、契約書の有無、保存場所、第三者利用の有無、重要度、開示段階、承継方法とします。登録権利だけに限定せず、日常業務で価値を生む無形資産を広く洗い出すことが重要です。

商標では会社名、屋号、商品名、サービス名、ロゴ、シリーズ名、キャッチフレーズを確認します。特許・実用新案・意匠では登録済みの権利だけでなく、出願中の案件、更新年金、共同出願、発明者との関係を確認します。著作物ではウェブサイト、写真、動画、パンフレット、マニュアル、図面、プログラム、データベース、研修教材を対象にします。営業秘密では製造条件、原価表、価格設定、顧客リスト、仕入条件、提案方法、ソースコード、レシピ等を洗い出します。

さらに、ドメイン名、メール環境、クラウドストレージ、SNS、ECモール、予約サイト、アプリストア、広告アカウントなど、事業継続に必要なデジタル資産を加えます。法的な知的財産権と契約上の利用権は同じではありませんが、M&A実務では承継後に使えるかという観点で一緒に把握する方が漏れを防げます。台帳の目的は資料を豪華にすることではなく、誰が何を所有し、どの条件で使い、いつまでに何を直すかを明確にすることです。

商標・屋号・ロゴを確認する実務

町田駅周辺の店舗、相模原の製造・サービス企業、多摩南部の地域密着事業では、会社名より屋号や商品名が顧客に浸透していることがあります。まず商標登録の有無、指定商品・指定役務、権利者名、存続期間、更新期限を確認します。登録がない場合でも直ちに価値がないわけではありませんが、同一・類似名称の第三者権利、使用地域、使用期間、売上規模、広告実績を整理し、継続利用のリスクを評価します。

ロゴは商標だけでなく著作権の問題も含みます。創業者の知人が無償で制作した、広告会社へ発注したが成果物の権利条項がない、複数回の改変で誰がどこを制作したか分からない、といったケースでは契約と制作経緯を確認します。必要に応じて譲渡契約、利用許諾、確認書を整えます。買い手が名称を維持したいか変更したいかによって対応は異なりますが、選択できる状態を作ることが価値になります。

商標の更新期限がM&Aの検討期間中に到来する場合は、誰が更新手続きを行い、費用を負担し、クロージングまでどの状態を維持するかを決めます。共同保有、グループ会社保有、社長個人保有の場合は、株式譲渡だけでは自動的に移りません。会社へ移転するのか、買い手へ直接移転するのか、一定期間ライセンスするのかを、税務と契約実務を含めて設計します。

著作権と外注制作物で起きやすい落とし穴

著作権は、登録がなくても創作により発生し得るため、登録一覧だけでは確認できません。ウェブサイト、パンフレット、商品写真、動画、店舗BGM、設計図、施工図、研修資料、プログラムなどについて、誰が創作し、会社はどの範囲で利用できるのかを確認します。制作費を会社が支払っただけで、当然に著作権が会社へ移るとは限らない点に注意が必要です。

外注契約では、成果物の著作権譲渡、二次利用、改変、複製、第三者への再許諾、著作者人格権への対応、素材の権利処理、納品データ、ソースファイルの引渡しを確認します。ウェブ制作会社との契約で保守終了後のデータ移管が定められていない、写真素材が限定ライセンス、動画の音源が特定媒体だけ許可、プログラムに再配布制限のある部品が含まれるといった事情は、承継後の利用方法を狭めます。

社内制作物についても、従業員の職務として作成されたのか、就業規則や雇用契約にどのような定めがあるか、個人的な作品を流用していないかを確認します。退職者が制作した重要資料は、当時の指示書、メール、給与・外注費の処理、契約書を集めます。事実が曖昧なら、関係が良好なうちに確認書を得る方が、M&Aの終盤で交渉するより安全です。ただし、秘密保持を守るため、確認理由の伝え方は慎重に設計します。

職務発明・ノウハウ・営業秘密を守る

製造業、設備工事、IT、研究開発型サービスでは、従業員が生み出した発明や改善が競争力の源泉になります。発明者、完成時期、職務との関係、社内規程、権利承継、対価の取扱い、出願の有無を確認します。特許を取得していなくても、製造条件や検査方法を秘密として管理する方が事業に適する場合があります。重要なのは、会社としてどの保護方法を選び、継続的に管理してきたかです。

営業秘密は、秘密と呼ぶだけでは十分ではありません。アクセス権限、パスワード、持出しルール、秘密表示、入退社時の誓約、外注先との秘密保持、共有フォルダのログ、紙資料の保管、廃棄手順を確認します。全情報を厳重に扱うのではなく、重要度に応じて区分し、必要な人だけがアクセスできる状態にすると、実務との両立がしやすくなります。

M&Aの買い手候補探索では、営業秘密を早期に出し過ぎないことが重要です。ノンネーム段階では強みを抽象化し、秘密保持後に概要、意向表明後またはデューデリジェンスで詳細、最終候補に限定して核心情報という段階開示を設けます。買い手が同業の場合は、顧客名、価格表、レシピ、ソースコード等の閲覧者を外部専門家や限定担当者に絞るクリーンチーム的な運用も検討します。

ライセンス契約・共同開発・第三者権利を確認する

自社が所有する権利だけでなく、第三者から借りている権利も事業価値を左右します。ソフトウェア、写真、フォント、キャラクター、技術、ブランド、フランチャイズ、データベース等のライセンス契約について、契約当事者、利用範囲、期間、更新、料金、譲渡・再許諾、支配権変更条項、解除事由を確認します。株式譲渡なら契約主体が同じでも、支配権変更に通知や同意が必要な場合があります。事業譲渡では個別承継が必要となることが多いため、早めの確認が欠かせません。

大学、取引先、共同開発会社との成果は、単独所有とは限りません。共同出願、共有著作権、改良技術、データ利用、成果公表の条件を確認します。買い手候補が承継後に自由に改良・販売できない場合、期待したシナジーが実現しません。共同開発契約の相手へ不用意に問い合わせるとM&Aが漏れるおそれがあるため、通知や同意の時期は秘密保持計画と一体で決めます。

第三者権利侵害の申入れ、警告書、削除依頼、プラットフォームでの出品停止、ドメイン紛争、従業員からの権利主張など、過去の問題も一覧化します。小さな問い合わせでも隠さず、発生日、内容、対応、現在の状態、再発防止をまとめます。買い手は問題の有無だけでなく、会社が事実を管理し説明できるかを見ています。

企業価値への反映方法と評価資料

知的財産の評価には、将来収益に着目する方法、再取得・再制作コストに着目する方法、比較可能な取引に着目する方法などがあります。ただし中小企業M&Aでは、知的財産だけを切り離した精密評価より、正常収益力、顧客基盤、人材、契約、設備等と合わせて事業全体の価値を検討することが一般的です。知的財産の価値を二重計上しないよう注意します。

譲渡企業が用意したい資料は、権利一覧、登録証、契約書、更新費用、関連売上、粗利、利用商品、広告実績、アクセス解析、指名検索、顧客継続率、ライセンス収支、侵害紛争履歴です。ノウハウなら、導入前後の不良率、作業時間、教育期間、歩留まり、見積回答速度などを示します。数字が取れない場合は、どの業務で誰がどのように使い、失うと何が止まるのかを業務フローで説明します。

買い手候補ごとに価値は変わります。同業者は既存販路や技術との組合せ、異業種は新規参入時間の短縮、地域企業は商圏と信用、投資会社は標準化と横展開を評価するかもしれません。だからこそ買い手候補探索では、単に高い価格を提示しそうな先ではなく、知的財産を活用でき、権利管理を引き継げる先を検討します。候補先の活用仮説を比較すると、価格以外の承継条件も具体化します。

株式譲渡と事業譲渡で承継方法はどう変わるか

株式譲渡では会社自体が存続するため、会社名義の知的財産は原則として会社に残ります。しかし、創業者個人や関連会社が保有する権利、支配権変更に同意が必要なライセンス、更新期限が迫る権利は別途対応が必要です。また、会社に権利が残ることと、権利帰属に瑕疵がないことは別問題です。過去の外注契約や職務発明の確認は省略できません。

事業譲渡では、譲渡対象の知的財産を個別に特定し、移転手続きや契約承継を行います。商標権・特許権の移転登録、著作権譲渡、ドメイン移管、アカウント名義変更、ライセンスの同意取得、データ移行を工程表にします。譲渡対象から漏れた資産があると、買い手は事業を完全に運営できません。逆に、譲渡企業が残す別事業に必要な権利まで移すと、譲渡企業側の事業が止まります。

共通ブランドを譲渡企業と買い手が一定期間併用する場合は、利用範囲、地域、商品、品質管理、期間、表示方法、終了時の措置を定めます。移行期間だけのライセンスであっても、ブランド毀損や顧客混乱を防ぐ設計が必要です。会社分割その他の手法でも個別事情が異なるため、取引スキームを決める前に重要な知的財産と契約を把握しておくと、実行可能性の低い案を避けられます。

秘密保持を守った買い手候補探索と情報開示

知的財産は説明しなければ価値が伝わらず、説明し過ぎれば流出リスクが高まるという難しさがあります。最初に、公開情報、概要開示、限定開示、クロージング後開示の四段階程度に分けます。ノンネーム資料では所在地や顧客名を特定しにくくしつつ、強みの種類と収益への効果を示します。秘密保持後は権利件数、利用分野、関連売上等を提示し、核心となる図面・配合・コード・顧客別価格は最終候補に絞ります。

資料には透かし、閲覧者名、ダウンロード制限、閲覧期限を設定し、質問と回答の履歴を残します。送付先を個人メールにせず、買い手側の担当者と専門家を確認します。同業候補へは、営業部門から遮断した担当者のみ閲覧できるかを確認します。案件が中止になった場合の返還・削除証明も秘密保持に沿って実施します。

従業員や外注先へ権利確認を行う場合も、M&Aを明かす必要があるとは限りません。契約管理の整備、情報セキュリティの見直し、事業継続計画の更新など、通常業務として合理的な範囲で資料を集められることがあります。ただし虚偽の説明をするのではなく、知る必要のある人を限定し、開示時期を計画します。地域内で取引関係が重なる町田・相模原・多摩南部では、候補先への接触順序も特に重要です。

デューデリジェンスで聞かれる質問と準備

買い手は、重要な知的財産の一覧、権利者、登録状況、更新期限、担保設定、共同保有、侵害・被侵害、ライセンス、職務発明、外注成果物、オープンソースソフトウェア、営業秘密管理、個人情報との関係を確認します。『問題ありません』と回答するより、確認範囲、資料、未確認事項、是正予定を示す方が信頼されます。

質問を受けてから資料を探すと、回答の不一致が増えます。台帳からバーチャルデータルームのフォルダ構成を作り、登録証、契約、更新証憑、社内規程、紛争資料を紐づけます。契約書がない場合は、発注書、請求書、メール、納品データ等の代替資料をまとめ、事実と法的評価を分けて説明します。未整備を隠すのではなく、クロージング前に直す事項と承継後に直す事項を区分します。

是正策には、名義移転、契約再締結、利用許諾取得、更新、不要権利の整理、アカウント管理者変更、退職者確認、アクセス制御、秘密表示、バックアップ、侵害調査があります。すべてを譲渡企業負担で完了するのが合理的とは限りません。価値への影響、時間、費用、相手方同意の必要性を比較し、価格、前提条件、補償、誓約事項へ適切に振り分けます。

最終契約・クロージングで確認する条項

最終契約では、知的財産の所有・使用権、第三者侵害、ライセンス、紛争、従業員・外注先の権利、営業秘密管理について表明保証が設けられることがあります。表明保証は抽象的に広げ過ぎず、重要性、認識限定、対象期間、開示資料との関係を確認します。判明している例外は開示資料へ具体的に記載し、事実と契約条項の矛盾を避けます。

クロージング前提条件には、商標等の移転登録申請、主要ライセンサーの同意、創業者個人から会社への譲渡、ドメイン移管準備、外注先確認書の取得などが考えられます。クロージング当日に必要な書類、認証コード、管理者権限、原本、電子データを一覧にし、担当者と期限を決めます。アカウントのパスワードを平文メールで送るのではなく、安全な受渡し方法を定めます。

承継後の移行期間には、譲渡企業オーナーが取引先や制作会社へ紹介し、権利更新やブランド運用を引き継ぐ場合があります。期間、業務範囲、報酬、責任、秘密保持を明確にします。特定のノウハウがオーナーの頭の中だけにあるなら、手順書、動画、同行、質疑期間を組み合わせます。知的財産を『書類』として渡すだけでなく、『使える状態』として渡すことが重要です。

具体例|地域製造会社が図面・商標・外注データを整えたケース

例えば、相模原市に工場を持ち、町田市や多摩南部の顧客へ部品を納める架空の製造会社を考えます。主力商品の名称は長年使用されていますが商標登録はなく、製品図面は創業者と元従業員が作成し、ウェブサイトとカタログは別々の制作会社へ依頼していました。検査条件はベテラン担当者のノートにあり、CADソフトは社長個人のメールで契約されていました。

譲渡企業はまず台帳を作り、関連売上と利用部署を紐づけました。商標調査の結果を踏まえて出願要否を専門家と検討し、元従業員の図面について作成経緯と職務を確認しました。制作会社とは納品データ、改変、承継後利用の範囲を確認し、CAD契約は法人管理へ移しました。検査条件はアクセス制限した手順書へ移し、閲覧履歴が残る保管方法に変更しました。

買い手候補探索では、ノンネーム段階で固有の商品名や図面を出さず、短納期と低不良率という効果を数値で示しました。秘密保持後に権利台帳の概要、最終候補へ図面サンプルと管理規程を開示しました。その結果、買い手は名称変更や再制作コストを過大に見積もらず、承継後の品質維持計画を具体化できました。これは架空の例ですが、権利を増やすことより、権利・契約・業務をつなげて説明する重要性を示しています。

失敗を避けるための注意点

第一に、M&Aが決まってから慌てて権利移転や出願をしないことです。先行権利、契約、税務、対価、関係者説明を確認せず動くと、新たな問題を生むことがあります。第二に、登録権利だけで評価を完結させないことです。使われていない権利が多くても価値とは限らず、未登録でも収益に不可欠なノウハウがあります。

第三に、すべての秘密を早期開示しないことです。価値説明と情報保護のバランスを取り、段階開示と候補先管理を徹底します。第四に、創業者個人の所有物と会社資産を混同しないことです。個人名義の商標、ドメイン、ソフトウェア、写真は取引スキームに合わせて処理します。第五に、契約書がないことを隠さないことです。代替証拠と是正案を提示した方が交渉は安定します。

第六に、買い手の活用方針を確認せず一律に整備しないことです。ブランド継続、統合、廃止では必要な対応が異なります。第七に、法務だけで結論を出さないことです。知的財産の収益への寄与、運用人材、システム、顧客契約、税務、会計を横断して判断します。第八に、承継後の更新担当を決めないまま終えないことです。更新期限、アカウント、費用予算、外部専門家の連絡先まで引き継ぎます。

売却準備90日の進め方

最初の30日では、登録権利、名称、制作物、図面、ノウハウ、ライセンス、アカウントを棚卸しします。決算書、契約台帳、固定資産台帳、外注費、広告費、システム費から手掛かりを探します。重要度を、売上停止への影響、代替時間、顧客認知、法的リスクで評価します。この段階では秘密を広げず、経営者、限られた担当者、M&A支援機関で仮台帳を作ります。

次の30日では、権利者と契約条件を裏付けます。登録情報、契約、発注書、請求書、メール、就業規則、退職時誓約を集め、未確認事項を一覧にします。専門家へ確認する論点を絞り、名義移転、確認書、更新、アクセス権修正など、秘密を守りながら実行できる是正から始めます。同時に、関連売上や業務指標を整理し、企業価値評価での説明材料を作ります。

最後の30日では、ノンネーム資料、企業概要書、データルーム、質問回答表へ反映します。買い手候補別に開示レベルと接触順を決め、同業候補には閲覧制限を強化します。クロージング前に必要な同意・移転と、承継後に実施する改善を工程表へ分けます。90日ですべてを完成させるのではなく、事実が見え、優先順位が決まり、安全に交渉へ入れる状態を目指します。

中小M&Aガイドラインを踏まえた支援機関選び

中小M&Aガイドラインは、支援内容、手数料、利益相反、秘密保持、契約上の留意点等について、依頼者が説明を受けて判断できることを重視しています。知的財産のように専門性の高い論点では、M&A支援機関がすべてを単独で判断するのではなく、必要に応じて弁護士、弁理士、税理士、IT専門家等と連携できるかが重要です。

相談時には、企業価値評価に知的財産をどう反映するか、買い手候補へいつ何を開示するか、同業候補への情報管理をどう行うか、専門家費用が誰の負担かを確認します。また『譲渡企業手数料0円』であっても、支援範囲、成功報酬以外の費用、専門家費用、買い手側報酬との関係、利益相反管理を説明してもらいます。費用表示だけでなく、支援の中身と情報管理の実効性を比べることが大切です。

よくある質問|知的財産と中小企業M&A

Q1.商標登録をしていない屋号でも会社売却できますか。登録がないことだけで会社売却ができなくなるわけではありません。まず長年の使用実績、顧客認知、同一・類似の先行権利、承継後の使用地域を確認します。登録を急ぐか、別名称へ移行するか、現状を開示して買い手と対応するかは、取引時期と事業価値を踏まえて判断します。出願すれば必ず登録されるわけではないため、専門家による調査を経ずに『権利化できます』と断定しないことが重要です。

Q2.社長個人名義の商標やドメインは株式譲渡で自動的に移りますか。会社の株主が変わっても、社長個人が保有する資産の所有者は自動的には変わりません。会社への事前移転、買い手への直接移転、一定期間の利用許諾などを検討します。対価、税務、移転手続き、クロージング前提条件との関係があるため、個人と会社の間で口頭合意だけにせず書面化します。

Q3.外注先との契約書が見つからない場合はどうすればよいですか。まず発注書、見積書、請求書、振込記録、メール、チャット、納品データを集め、依頼内容と合意範囲を復元します。その上で現在も連絡可能なら、利用範囲や権利帰属を確認し、必要な確認書や契約を検討します。M&Aを告げずに通常の契約管理として整理できる場合もありますが、相手との関係や秘密保持を踏まえて接触方法を決めます。

Q4.特許がなくてもノウハウは評価されますか。特許登録がないノウハウでも、売上、品質、納期、原価、顧客維持に継続的な効果があり、会社として再現・管理できるなら、事業価値の説明材料になります。ただしベテラン一人の記憶だけに依存し、退職時に失われる状態では買い手のリスクが高まります。手順書、教育、権限管理、バックアップを組み合わせ、承継可能性を示します。

Q5.相談すると知的財産や会社売却の検討が地域に漏れませんか。相談先の秘密保持義務、情報管理方法、買い手候補への接触手順を確認してください。初回相談では会社名や核心情報をすべて出さず、概要から整理する方法もあります。町田・相模原・多摩南部のように経営者、金融機関、取引先のつながりが重なる地域では、候補先名の承認、接触順、開示資料の粒度を譲渡企業と共有して進めることが特に大切です。

まとめ|知的財産を『使える形』で承継する

知的財産の整理は、商標登録の件数を増やすことではありません。事業の収益を支える名称、制作物、技術、ノウハウ、ライセンス、デジタル資産について、誰が権利を持ち、会社がどの条件で使い、買い手が承継後も安全に使えるかを明らかにする作業です。権利、契約、運用、収益を一つの台帳でつなぐと、企業価値評価とデューデリジェンスの説明が整います。

町田市、相模原市、多摩南部で会社売却や事業承継を考え始めた段階なら、まず重要な屋号、ロゴ、図面、ウェブサイト、ノウハウ、アカウントを十件程度書き出してください。権利者や契約が分からない項目こそ、早期に整理する価値があります。売却を決める前なら、秘密保持を保ちながら複数の選択肢を比較できます。

町田M&A総合センターでは、地域の中小企業オーナーから、会社売却、事業承継、企業価値評価、譲渡企業手数料0円の仕組み、秘密保持、買い手候補探索に関する相談を受け付けています。知的財産の台帳が未完成でも構いません。社内、従業員、取引先へ知られる前に、何を確認し、どの順で専門家へつなぐべきかを整理するところからご相談ください。※本稿は一般的な情報提供であり、個別案件の法務・税務・知財判断を示すものではありません。

会社売却前の知的財産チェックリスト

  • 会社名・屋号・商品名・ロゴの権利者と登録状況を確認した
  • 特許・意匠・商標の更新期限と費用を確認した
  • ウェブ・写真・動画・図面・プログラムの制作者を確認した
  • 外注契約の著作権譲渡・改変・再許諾条項を確認した
  • 職務発明規程と従業員・退職者の関係を確認した
  • 営業秘密のアクセス権、表示、持出し、廃棄ルールを確認した
  • ライセンスの譲渡・支配権変更・同意条項を確認した
  • ドメイン、SNS、クラウド、EC等の管理者を法人管理にした
  • 知的財産と関連売上・粗利・業務効果を紐づけた
  • 侵害警告・紛争・削除依頼の履歴を一覧にした
  • ノンネーム、NDA後、デューデリジェンス時の段階開示を決めた
  • 株式譲渡・事業譲渡ごとの移転手続きを整理した
  • クロージング前と承継後の是正事項を分けた
  • 表明保証、前提条件、補償、誓約事項を専門家と確認する
  • 中小M&Aガイドラインを踏まえ支援範囲と費用説明を受ける
コラム
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